目の病気
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今回は白内障についてです。 当医院では毎週金曜日に白内障手術をおこなっています。 遠方の方などを除いて、大部分の方が入院をせずに外来手術、つまり手術したその日に帰宅していただいております。 私が当医院に戻ってからはやいもので、約1000例の手術件数に達しました。少しずつですが、白内障の手術の著しい進歩を含め、 白内障についてわかりやすく説明をしていきたいと思っていますのでよろしくお願いします。 平成12年1月7日 |
白内障はすでにキリストが生まれる前にインドにおいて手術がおこなわれていました。 ただ単ににごっている水晶体を針をつかって眼内に落とすというやりかたでした。 もちろん人工レンズをいれるわけでもないのでピントも合いませんし、 水晶体は眼内に落とすとぶどう膜炎という失明する眼の炎症をおこすので、一時的に明るくなっても結局は見えなくなるというものでした。 しかし、それぐらい古くから人々を悩ましていた病気だということです。 平成12年3月2日 |
白内障は、あとで述べるいろいろな原因で起こりますが、どのような症状が見られるかというと、 初期には視力の不安定、さらに進むと視力の低下がおもに見られます。視力の不安定とは、暗い家の中や曇りの日はわりとよく見えるのですが、 逆に天気のいい日の屋外や、車を運転する方などが対向車が夜間ライトを遠目できた時に、非常に見にくく感じる事などです。この事を昼盲と呼んでいます。 視力の低下とは、たとえどんな強いメガネをかけても視力がなかなかでないことです。 ただそのことを自覚するのがむつかしい患者さんもいらっしゃいます。 というのは、車の免許があるかないかなどの生活習慣による事や、目が二つあることによる事です。 目が二つあると、片目だけ視力が落ちてもわからない場合があり、せいぜい立体感が出にくくなり、物をつかみにくくなったりする程度のこともあります。 一方、両目が同じように視力が落ちても、徐々に落ちる場合が多く、左右比べようがなく、まあこんなもんかなと自覚しないのです。 平成12年5月30日 |
白内障とは眼の中にある透明な水晶体がにごって視力低下をおこすことです。 にごるとはどういうことかと申し上げますと可溶性たんぱくという物質で正常な水晶体はできていますがいろいろな原因で不溶性たんぱくという にごりをおこす物質の割合がふえてきます。一番の原因は加齢現象で30歳をすぎるとだれでも少しは白内障がみられるといわれています。 若い世代にみられる原因としてはアトピーによるものが臨床上よくあります。当院でも何人か20歳代のかたの手術をおこないました。 アトピーのかたは眼をこすりやすいためその行為による外傷性にちかい白内障の出現、あるいはアトピーをおこすそれ自体の要因つまり受精卵 〔お母さんのおなかの中にいるごく初期〕の外胚葉のちいさなエラーによるのではないかといわれています。水晶体も外胚葉から分化してできますから。 その他の原因としては、糖尿病によるもの、眼を打ったりする外傷によるもの、網膜はく離ほか眼の疾患によるもの先天性なものなどがあります。 平成12年11月2日 |
正常な水晶体(透明である) | 老人性白内障(いわゆる白そこひ) |
当院手術後の眼内レンズ移植眼 | 後発白内障レーザー治療後 |
治療として薬物療法と手術療法があります。 薬物療法には点眼と内服がありますが、なかなか効き目が悪くせいぜい進行を止めるのが精一杯です。 市販されている点眼液は、購入してから自分でまぜて使うようになっていますが、理論的により効果がよわいといわれています。 一方手術療法ですが、おおきく3種類にわけられます。眼内レンズを入れることができない水晶体嚢内摘出術、レンズを入れることができるが 切り口(手術創)が大きくなる水晶体嚢外摘出術、日帰り手術も可能な切り口が小さくてすむ、当院で大部分の方におこなっている超音波乳化吸引術です。 こまかい事はともかくとして、とにかく手術器械も技術も日進月歩な分野です。 また手術をするかどうかの見極めあるいは時期というのはなかなかとむつかしいのが本音です。 というのは、必ずしもいいことばかりではなくやはりさまざまなリスクというものが付きまといます。 平成13年2月28日 |
まず、手術はほとんどの患者さんにおいては、意識のある状態つまり局所麻酔でおこないますが、
その麻酔薬によって急激なアレルギーを起こしひどい場合には心臓が止まってしまうことがまれのまれにおこる事があります。 平成13年7月5日 |
白内障手術後の安静は3時間ぐらいですが、およそ一週間はお風呂に入ることができません。感染症が怖いためです。
また、手術後に色々な原因で眼圧が上がる(目の玉が硬くなる)ことがあります。そうすると吐き気や頭痛が起こります。
一般的には2日ぐらいで元に戻りますが、術後一番よくみられる現象です。ただし、ほとんどの患者さんは術後も痛みなく過ごせます。 平成14年9月14日 |
二重瞼形成法について 最近、ちまたでは美容整形がブームだそうです。 つまり手術によってできる限り患者さんの希望通りに容姿をととのえるのですが、その中の代表的な例が二重瞼形成法、つまり二重まぶたをつくることです。 雑誌などをみると形成外科の先生がおもにやっているように思われるかもしれませんが、眼科においても、内反症―まぶたが内をむいている―まつげの患者さんに対して おこなっております。実際にはいろいろな手術のやり方がありますが、皮膚を切るのか切らないのかで大きく分けることができます。 皮膚を切る手術のやり方は、しわとり手術に近いものがあり効果が出やすいのですが、一度つくってしまうとやり直しが大変です。 またすこし時間がかかるうえ、手術中の痛みもあります。皮膚を切らない手術のやり方は、時間が10分弱で痛みが少ない反面、効果がでにくい患者さんもいらっしゃいます。 ただやり直しが比較的安全かつ簡単にできるので、とくに若い方に二重瞼を形成するときに好んで行なわれます。 代表的な手術法が「埋没縫合法」といい細い糸をまぶたの中に通して、それによってハンガーみたいにまぶたを吊るす感じにして二重まぶたをつくります。 平成15年1月9日 |
黒そこひは、怖い病気 黒そこひは、白そこひと云われている白内障、青そこひと云われている緑内障に比べて、命の危険信号の意味合いもあり、 ひじょうに怖い病気です。瞬時にして目の前が真っ暗になるため、この様に云われているのですが、網膜動脈閉塞症と言います。簡単に申し上げますと、 眼の奥にある網膜という、映像を写し出している大事な部分の動脈がつまって、そして酸素などがいきわたらなくなり、網膜が働かなくなって、最悪の場合は、 光しかわからないほどの視力の低下をおこす病気です。脳に流れる内頸動脈のエダである眼動脈が、高血圧、動脈硬化により細くなってさらにそこで、 脂肪や血栓がつまらせる事によりおこります。脳梗塞による体の麻痺のかわりに眼が犠牲になってくれる病気であり、骨折などの外傷によるものを除いて、 生命予後がわるい場合におこりやすい、怖い病気です。治療は、緊急に眼をマッサージしたり、眼の水を抜いたり、さらには特殊な気体を吸ってもらったりしますが、 視力は回復しないことが多いことが実情です。当院にて、10年で5人の患者さんがみられました。 平成15年2月19日 |
結膜炎 結膜とは、しろめ部分の表面と上と下のまぶたの裏側を覆っている粘膜のことをいい、 そこに炎症が起きた状態を結膜炎といいます。めやにや涙がよく出る、まぶたが腫れぼったい、眼が充血する、コロコロする、かゆいなどの症状を患者さんはいわれます。 結膜炎は眼科で白内障とともに多い病気です。原因は様々ですが、特に注意しなければならないのは、ウイルスによって起きる「はやりめ」と呼ばれる 流行性角結膜炎などの感染性のものです。院内でも、来院された患者さんから医療従事者のあなたへ、そして、医療従事者のあなたから別の病気で来られた患者さんへと どんどんと感染していきます。実は、「はやりめ」に罹ってしまったことがある眼科医も多いのです。 梅雨時から夏にかけて多く見られますが油断は大敵です。患者さんの周囲に同じような症状の方がいないかどうかなどの問診をしっかりとしないで、 視力検査などの様々な検査をしないようにしないと、後で院内中のアルコール大消毒になります。また、若い患者さんの中には、 性行為感染症の一種であるクラミジア性結膜炎の方もおられます。どんな時でも、来院されたら患者さんに眼を触らないようにしてもらうこと、 皆さん自身の手指や検査機械のアルコール消毒を毎回行なうように心がけてください。 非感染性のものとしては、カタル性結膜炎といわれるものや、アレルギー性結膜炎があります。カタル性結膜炎は、ブドウ球菌やレンサ球菌といった細菌が原因で起こり、 膿性のめやにが典型的です。抗生物質の目薬がよく効きます。アレルギー性結膜炎は、花粉やハウスダストなどで起こり、白い糸のようなめやにが典型的です。 副腎皮質ホルモンの目薬がよく効きますが、症状などによって抗アレルギー薬を使用します。その他の原因として、眼をこすった事によるもの、 ドライアイによるものなどがあります。眼科医にとって、「たかが結膜炎、されど結膜炎」なのです。 「眼科ケア」誌より一部抜粋 平成17年2月18日 |
飛蚊症 久しぶりに眼の病気について説明させていただきます。説明というより体験談みたいなものかもしれませんが・・・。 今回は「飛蚊症」についてです。まずは、何故久しぶりに書く気になったかと申しますと、私が現在悩まされているからです。 医者も人間でもちろん病気になりますが、まさか眼科の私が日常診察でもあまり見ない状態になってしまうとは! 「飛蚊症」はいろいろな形、おたまじゃくしのたまごのかたまりや糸くずみたいなものが目の前にみえる症状をいいます。 内科の症状に例えると咳みたいなもので、原因となる病気はさまざまです。多くは網膜という映像を映し出す眼の奥の大事な膜の前にある硝子体 (しょうしたいといいます)というところが、加齢現象や近視によって変性を起こしたことにより生じます。 その他として、もともと硝子体に存在する生理的なもの、ブドウ膜(茶目の延長)というところの炎症、網膜剥離の前触れ(網膜に穴が開いたとき)や 硝子体出血によってみられます。体質的に網膜と硝子体の癒着がきつい場合は、接着力の強いシールを剥がすときに下地も傷めることがあるのと同様に、 後部硝子体剥離がおこるとともに網膜の血管を損傷したり穴をあけたりすることがあります。 眼科医は注意深く後部硝子体剥離が完全に終了するのを注意深く診察していく必要があるといわれています。
さて、私は大学時代より両眼に明るいところで白いものを見ると両眼に虫が飛んでいるという「飛蚊症」というものを 自覚しておりました。近視がけっこうございますので、一般的に加齢によって認める後部硝子体剥離による状況が早期に起きたものだと思っております。 ところが、先日、医院内で筋トレを2時間ぶっ続けでした後に、片眼に新たに沢山の虫が飛んでいるのを自覚しました。「おやおや?」と思っていたら、 次には全体がぼやけてきてきました。これは網膜に穴が開き網膜剥離の前兆に違いないと思い、慌てて実姉に眼底を診てもらいました。 結果は、硝子体出血による「飛蚊症」でした。網膜に穴はあいておりませんでした。では、なぜ硝子体出血が起きてしまったのでしょうか? 実は、私自身も長い間眼科をしていても診たことがなかったのですが、Valsalva出血性網膜症を起こしたみたいです。 昨年に、私自身この病気について色々と調べ、海外に論文を提出したのですが・・・。思わず「私が!?」と言いたくなりました。 Valsalva 出血性網膜症とは、排便時の力みや重いものをもったときにお腹や胸の圧が高まり血液が心臓に戻りにくくなり網膜に出血を起こす病気です。 筋トレで重いものを、呼吸を止めて、かなりハードに持ち上げていたためにおこったのです。 現在は「飛蚊症」はほんの少し見られるものの視力も幸いにして戻り、軽めの筋トレを再開しております。 ただ、出来るだけ有酸素運動ぐらいの軽めに負荷をかけ、また、負荷をかけている時に呼吸を止めずにはゆっくり吐きながら、 呼吸法には十分注意しておこなっております。前後のストレッチもしっかりとするようにしました。再認識です。やはり、眼は大事ですね!
−今年10月、GUAMホテル内トレーニングルームにて− 平成18年10月21日 |