未曾有 2

院長 辻中 まさたけ

当院の患者さんへのご迷惑などを考えたが、姉に無理を云ってある程度代診してもらうことにして、私はやはり東北の被災地へボランティアに行くことにした。日本法医学学会を通して警察庁派遣医として、3月19日午後より25日までお亡くなりになられた方々の検案である。

非常に外来が混んでいる19日土曜日は9時ちょうどより診察を開始して、終了後すぐに新幹線に飛び乗り羽田より飛行機で晩には山形空港に着いた。山形県警の方に出迎えていただきその後、雪が残るホテルへ到着。

次の日からは毎日宮城県まで出向し、朝の5時20分起きの夜の11時半に就寝の日々であった。業務のお話は申し上げることはできないが、とても肉体的にも精神的にも参る日々であった。そのせいか体重がどうやら5キロぐらい落ちているみたいである。 自然の脅威というものはとてつもない。意味もなく、そして前ぶれもなく人間というちっぽけな動物に襲いかかる。適切な言葉ではないかもしれないが、仕方がないとしか言いようがないほど打ちのめされる。

混沌としていた被災地も23日ぐらいには一部で店舗が開き始め、24日にはコンビニの営業しているところも見つけた。被害の大きかった地域を除き、急速に日常というものを戻してきている感がした。

亡くなられた方々に心よりお悔み申し上げます。  

合掌、私にはこれぐらいのことしかできない。

 
 
 

 平成23年3月16日
 
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