姉に診療を代わってもらい、9月の初めより一週間ほどパリの国際学会に出席させていただきました。4度目のパリは猛暑に襲われた日本と違い、長袖をオペラ座の近くにあったユニクロで購入しなければならないぐらいに肌寒い秋を感じさせる気候でありました。
当地では仲の良い先生方と合流し充実した日程を過ごさせていただきました。
そこで、事件が起こったのです。
ある先生と真昼間にルーブル美術館の前で待ち合わせをし、パリの街を散策していた時のことです。
背の曲がった60代の男が私たちに地図を持ってこの場所はどのように行くかと指で指し示しながら寄ってきました。(指し示していたのは大凱旋門に見えました)
私は面倒くさいので手を横に振り無視して先に行きましたが、心の優しいその先生は、
「I’m a Japanese. Tourist, tourist!」
といって立ち止まって話し始めました。
仕方がないと思い戻って近づくと、30代後半の男が何処かから走って私たちのところへやってきました。
聞き取りにくい英語で、日本語にするとこう言いました。
「お前たちは何処から来た?」
60代の男、
「イタリアからだ」
私たち、
「日本からだ」
30代の男は2秒ほど右手でPOLICEと書かれたIDカードを見せながら、
「パスポートを見せろ」
60代の男がまずお手本みたいに提示し、続いて仲の良い先生も持っていて見せました。
そんな大事なモノはホテルのセーフティーボックスに入れてある私は、
「もっていない」
と答えました。
30代のPOLICEと名乗る男、
「この辺に、トルコ人がドラッグの販売をしているので気をつけないといけない。所持品検査をするので財布を見せてほしい。」
60代のイタリアからきたと名乗る男は財布の中身を見せて、POLICEと名乗る男が紙幣の臭いを嗅ぎながら枚数を確認しました。
すでにおかしいと思っている私でしたが右に倣え、です。財布の中身は危ないので高額紙幣はセーフティーボックスに入れてあり、20ユーロ紙幣が40枚ぐらいと、さらに少額な紙幣が数枚入れてあるだけです。50cm位の本当に眼の前で60代のイタリアからきたと名乗る男に対して行ったことと同じことをしました。抜き取るなどのまったくおかしなところはありませんでした。次に仲の良い先生の番。
同様な行いをしていた時に紙幣が地面に落ち散乱しました。その時に二人で一緒に拾ってチェックは終了しました。
その後、POLICEと名乗る男は握手を求めながら3人に笑顔で、
「トルコ人には気を付けるように」
と言いました。
60代のイタリアからきたと名乗る男は再び私たちに、
「この場所はどのようにいくのか?」
とまた質問が私たちに始まりました。
もう、うんざり、の私たちは無視して早足で歩き出しました。
そして歩きながら仲の良い先生に聞きました。
「お金を拾う時に盗られていませんか?確認してみてください」
先生曰く、
「わざと落とされたときに500ユーロやられた!」
やっぱり、でした。
わたしも20ユーロを5枚ぐらいテーブルマジックみたいにやられたような気がします。
危ないと思ってしっかり確認していたのですが・・・。
それよりも財布を確認させること自体がおかしいのですが、見事なニセ警官とニセ観光客による劇でした。
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