山登り

院長 辻中 まさたけ
 

藤原岳に登って以降、相変わらず近郊の低山や里山をうろうろし続けている。最初は散歩の延長みたいな感覚で山登りは体力づくりの一環だと思っていたのが、この山が登れるほどの体力が自分の中にまだ残っているという確認作業の意味合いが強くなってきている昨今である。

ところで、山登りにはみんなでワイワイと話しながら登ったり、花をゆっくりと観察しながら登ったりと、いろいろな楽しみ方がある。もちろんお腹がでっぱっている私は重力に逆らった山登りが得意なわけがなく、肩で息をしながらヨチヨチと歩き、後ろの方々に抜かれながらのマイペース一人旅である。 登りながら思うことは、「しんどい!」ということだけで、楽しいと思う余裕はまったくない。ただ、「一歩でも前へ足を運ぼう、頂上へ向おう」、黙々と上がる。 見晴らしのよい頂上へ着き下界の雄大な景色を眺めると、満足感や達成感が沸き起こり今までの疲れが一気に吹き飛ぶ、そんな自虐的山登りが得意である。

山登りは私の人生感にヒントを与えてくれる。患者さんからよく聞く言葉に、「年を取ると良いことは一つもない」、がある。私も同感である。生老病死、四苦八苦の人生である。ただ、誰もが避けることができないお迎えの時に、山頂にへとへとになってたどり着き、素晴らしい眺めの眼下を見渡したときと同じような満足感や達成感が心の隅々まで広がれば本当に幸せである。

 
 

 平成21年5月27日

 

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