空(くう)

院長 辻中 まさたけ

ゴールデンウイークに台北に観光に行ってきて、生まれて初めての海外脱出組を経験した。旅行代金は確かにべらぼうに高かったが、空港等も毎年いつもニュースで見ていたほど混んでおらず拍子抜けの感があった。

さて、今回の旅行で一番印象に残ったことは何かというと、軍人さんたちの国営墓地で見た閲兵さんたちの無の境地、つまり「空」の姿であった。台北の蒸し暑い気候のなか、そして、周りに観光客がたくさん集まってワイワイと見物しているなかで、本当にまばたきひとつせずにジーとに立っていた。眼は充血し汗は滝のように頭から流れながら、である。こういうのを直立不動というのだ、と感心した。きっと、頭はからっぽ、自分という存在を忘れてしまっているに違いない。

名古屋への帰りの飛行機のなかで小窓から雲海と沈みゆく夕陽を眺めながら、現在の自分というものの存在意義をぼんやりと考えてみた。なにかが解りそうな気がしたが。もう忘れてしまった。

 
 
 
 平成20年5月25日
 
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